近年多く見られる不眠症。今月は不眠に使われる薬を幾つか説明します。
寝付きが悪い、夜中に何回も目が覚める、一度目が覚めると寝られない、朝早くに目が覚める、朝すっきりしない、日中眠い、等が主な不眠症の症状です。軽度のものから、重症のものまで幅広く見みられますが、この様な症状が続くと実際の睡眠時間が減る為、日常の生活に影響します。
不眠症は大きく分けて一次性(不眠が単独の症状)、二次性(他の病気が原因で不眠になる場合、例えば鬱病、薬の副作用)に分かれ、急性(1ヶ月未満)と慢性(1ヶ月以上)に分かれます。
急性の不眠は急激なストレス(転職、離婚、身内の不幸、引越し)、時差ぼけ等からおこる事が多く、問題点が解決すれば自然に症状は改善するのが一般的です。
慢性の不眠は鬱症状、不安感、慢性のストレス、腰痛、関節痛等から起こる慢性的な痛み等が原因としてみられます。この場合不眠状態が長期間に亘る為、睡眠薬の内服が必要となる事が多くなります。
現在、多数の睡眠薬や睡眠導入剤があります。正しく使用すれば効果的ですが、使いすぎると問題点もあります。現在使用されている睡眠薬を幾つか説明します。
● Diphenhydramine(ジフェンヒドラミン)
この薬は医師の処方箋無しで市販購入可能です。この薬は本来アレルギーに使用されている薬ですが、眠くなる副作用があるのが特徴です。その副作用を利用して、現在は睡眠薬として使用されています。
Sleepinal, SimplySleep, Sominex等の名前で売られています。また、アレルギーに使用されるBenadrylは名前は違いますが、成分は同じものです。
この種類の薬は軽度の不眠には適しています。但し毎日使うようになると効果が徐々に無くなる様なので、頓服使用に適しています。また、依存性が無いのも利点の一つです。欠点は65歳以上の男性が使用すると尿の出が悪くなる事がありますが、その他は特にありません。安全性が高い為、実際は睡眠薬ではないのですが、入院患者が眠れない時はまず使われるのがこの薬です。
時々眠れない事があるので何か持っていたいという場合はまずこの薬が適当でしょう。
● Ambien,
Sonata, Lunesta
この種類が現在一番頻繁に使われている睡眠薬です。処方箋が必要で、市販薬よりも効果は期待できます。この種類の薬は脳のGABA受容体を刺激し、睡眠を促す作用で効果を表します。従来の睡眠薬に比べると効き目が早く、比較的副作用が少なく、次の日に眠気が残ると言う事が少なくなっています。但しある程度の依存性はやはり認められているので出来る限り毎晩の使用は避けた方が良いでしょう。
● Rozerem
最も最新の睡眠薬で、今後の使用が増える事が予想されています。この薬はメラトニン受容体を通して睡眠を促す作用を持っています。この薬の利点は依存性が無い事、副作用が非常に少ない事等です。この薬は軽度の不眠症、高齢の方の不眠症、または他の依存性のある睡眠薬をやめたい時等に使用されます。依存性が無いため、長期間の使用も認可されていますが、即効性は他の薬と比べると劣るようですので、症状の重い方の単独療法には向いていないでしょう。
● ベンゾジアゼピン
古くから使われている種類の薬で、日本ではハルシオン、デパス、ソラナックス等として良く使われています。この種類の薬は眠気を誘発するには優れているのですが、その反面依存性が強い事、副作用が比較的多い(次の日にもまだ眠い、記憶力の低下、筋弛緩作用)、薬の乱用等が多い事から注意しながらの使用が必要です。
その他にも日常的に下記の事を注意して下さい。
■ 夕方以降はカフェイン類を摂らない事
■ 煙草、アルコール類は睡眠前3時間は使用しない事
■ 運動は定期的にする事、但し睡眠3時間前には終了する事
■ 食事は睡眠3時間前には終了する事
■ 週末も含めて出来る限り起床時間、就寝時間を同じにする事
■ 昼寝は避ける
■ ベッドの上では睡眠以外の事は避ける(テレビを見る、勉強、電話等)
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