10月に入り、インフルエンザの季節が近づいてきました。過去数年では予防接種不足が問題となりました。今年は昨年よりも数はある見込みですが、予防接種を希望される方は早めに受けましょう。
■豆知識■
毎年5〜20%の方がインフルエンザに罹ります。
毎年20万人以上の方がインフルエンザに関連する合併症で入院します。
毎年約36000人の方がインフルエンザに関連する合併症で亡くなります。
インフルエンザは11月から3月に流行します。そのため、この期間に体内に抗体を作っておくことが必要となります。インフルエンザの予防接種は受けてから約1〜2週間で抗体ができ、抗体ができれば約6ヶ月間有効です。ですから予防接種は10月から11月半ばまでに受けるのが一番効果的です。但し、インフルエンザは3月末ぐらいまで発生すると予想されていますので、遅れて受けても効果はあるでしょう。
又、予防接種を受けてから抗体が出来るまでの期間に感染した場合は、発病してしまいますので、家族の一員が発病したからとあわてて予防接種を受けても間に合わないことが多いと言えます。
インフルンエザは空気感染で感染します。感染期間は症状が出る1日前から、症状が出てから5日間の間になります。つまりまだ症状がなくインフルエンザに罹っていると知らない間に他人に移すことも可能と言うことです。 ですから、インフルエンザが流行り出すと、いつ誰に移されてもおかしくありません。いかに予防接種を受けることが大切かということです。
予防接種は特殊な病気、卵アレルギー、過去の予防接種に対する過剰反応、6ヶ月未満、等の方を除いて誰でも受けることが可能です。但し特に受けておくべき方は
1) 合併症を起こす可能性が高い方(6ヶ月から6歳、妊婦、50歳以上、糖尿病等の慢性疾患を持っている方、)
2) 合併症を起こしやすい方と暮らしている場合 この場合は自分の予防よりも相手に感染させないために予防することが重要です。
予防接種の副作用として一番多いのは筋肉注射による筋肉痛です。これは二日間位で治ります。その他には微熱、関節の痛みなどの軽い風邪の症状が現れる事があります。通常このような症状は注射を受けてから6〜12時間後に現れ、二日間程度で治ります。また、予防注射を接種したためにインフルエンザになるのではないか、と心配をしている方も少なくないようですが、インフルエンザの予防接種は、既に死んでいるウィルスを基に作られているので、インフルエンザになる心配はありません。
注射嫌いの方の為に鼻から注入するスプレー式の予防薬、Flumistもあります。この予防薬は効果も注射とほぼ同じとみられ、副作用も鼻水、鼻詰まりなど軽めです。但しコストは予防接種と比べて高めです。Flumistは鼻粘膜から吸収され、体内で抗体が作られます。また、注射の場合、ウィルスはすでに死んだものを使っていますが、スプレーのほうは、弱毒化されたウィルスを使っています。弱毒化ウィルスは、健康で免疫機能が正常な方にはインフルエンザの症状は起こしません。
Flumistは5歳から49歳までの慢性疾患を伴わない方のみの使用となっております。
Flumistは弱毒化ウィルスを使っていますが、これはまだ生きているウィルスです。
小さな子供、または高齢の方は免疫機能が低下している可能性がありますので、
Flumistがインフルエンザの症状を起こしてしまう恐れがあります。又年齢にかかわらず、慢性心肺疾患、腎臓病、糖尿病などを抱えている方も同じく対象外となります。又予防接種のほうは認められていますが、妊婦への安全性はまだ明らかでないため、対象外となります。副作用は子供では鼻水、頭痛、嘔吐、筋肉痛、微熱などが見られることがあります。大人では、鼻水、頭痛、咽頭痛、咳などが見られます。大人では熱は少ないようです。
インフルエンザが発病すると症状としては急に起こる発熱、悪寒、倦怠感、咳、筋肉痛等があります。血液検査をした場合は、白血球数が低下するのが特徴です。インフルエンザを他の病気や風邪と見分けるのはなかなか難しいことですが、インフルエンザの場合には咳が症状の一つとしてほぼ必ず現れます。又、インフルエンザのウィルスを調べる検査もあり、診断を出すのが容易になってきました。検査は15分ほどで結果が分かります。 幸いな事に殆どの場合、インフルエンザは一週間位で回復します。但し高齢の方、あるいは慢性の病気を持っている方などは、回復が長引いたり、合併症を起こしたり、最悪の場合は死亡することもあります。
インフルエンザの約90%は問題なく回復します。但しインフルエンザウィルスに感染すると、気管支の細胞がダメージを受け、肺炎になりやすくなります。10%ぐらいの人は合併症として肺炎を起こします。高い熱が四日間以上続いたり、一度下がった熱が再び上昇し始め、咳や痰がひどくなってきた場合には必ず医師の診察を受けて下さい。
治療法としては解熱剤、咳止めなどを用います。症状が現れてから二日以内の場合には、抗ウィルス剤を使うと、熱が下がり回復が早くなります。但し、発病してから二日以内に飲まないと効果がないので、早めに主治医に相談する事をお勧めします。
現在使われている抗ウィルス剤はTamiflu、Relenza、Flumadineがあります。TamifluとRelenzaにはいくつかの利点があります。この二つはA型及びB型インフルエンザに効果があり、治療期間が短く、5日間ですみます。Relenzaは紛状の薬ですので、胃の弱い方にはお勧めです。欠点は紛状のRelenzaは喘息の病気を持つ方は発作を起こしてしまうことがあると言うことです。又粉を吸い込むのに多少のコツが要りますので、正しくできないと治療が無効になってしまいます。FlumandineはB型には効かない、治療期間が長い、副作用が比較的多いなどの欠点があり、最近はあまり使われていません。
最後に一言付け加えますと、(早めに早めに)を実行して下さい。早めに予防接種をすること、また発病したら早めに治療を開始することです。身近にいる人が発病してから予防接種をしても手遅れ、また症状があらわれてから3〜4日経ってしまうと薬も効果がなくなってしまうので、辛い7〜10日間を過ごすことになります。重要なことは症状などをよく理解しておき、それらしき症状が出た場合は待たずにすぐ受診して治療を開始する。早く診断をつけて、抗ウィルス剤の治療を開始すれば症状も比較的軽くすみます。
もし、身近にいる方がインフルエンザにかかった場合は、予防薬として、インフルエンザウィルスに効く抗ウィルス剤を服用することも可能です。これを服用することによって発病をある程度予防することが出来ます。 |