胆嚢とは約8〜10cmの袋状の臓器です。約50ccの容積を持ち、内部では胆汁を貯留しています。十二指腸に食べ物が入ると、CCKというホルモンが分泌され、胆嚢が収縮し、胆汁を分泌します。胆汁は脂肪の分解を補助します。
胆嚢に起こる病気の中で、頻繁に見られる病気のひとつが胆石です。胆石は誰にでも起こり得ますが、男性よりも女性に多く、歳を取るとともに、発病率も高くなります。米国では、65歳になると、男性の1割、女性の2割が胆石を持っています。胆石になりやすい要因の1つとして、肥満があります。また急激な体重減少も胆石の原因となります。その他では、妊娠中の方、糖尿病、肝硬変、クローン病などを持っている方にも胆石は多く見られます。
胆石は大きく2種類に分けられます。
■コレステロール系結石(全体の約70%)
■ビリルビン系結石(全体の約30%)
これらの結石は成分が違いますが、予後、治療法はほぼ同じです。症状としては半数以上が無症状で、健診時などに見つかるというケースが殆どです。無症状の場合は、特に治療は必要ありません。症状は、右上腹部の痛みが現れ、更にこの痛みは背中、肩に放散する事がよく見られます。痛みは油物を食べた約3時間後に起こりやすいようです。
また必ずしも典型的な痛みではなく、みぞおちの不快感、前胸部不快感などで現れる事もあり、胃の症状、又は心臓の症状と間違えられる事もあります。診断は超音波検査がもっとも適切で、90%以上の患者さんに石が認められます。その他に、血液検査で、ビリルビンの上昇、肝機能の上昇などが見られる事もあります。腹部単純X線では石の1割ぐらいしか写らず、適当な検査ではありません。
さて胆石が見つかったらどうすればよいのでしょうか?大ざっぱに言うと、無症状の場合は経過観察、症状があれば胆嚢摘出手術となります。どの方が、胆石による症状をいずれ起こすかを予想するのは困難です。石の数、大きさ、年齢、性別など色々研究されましたが、明らかな結果は出ていません。無症状で手術を必要とするケースはかなり意見が別れてくるものです。理想的には、健康で、無症状な時に手術をする方が、高齢になったり、急性胆嚢炎,黄疸等の合併症を起こしたり、他の病気にかかっている時よりも安全です。但し、一生症状が出ない事の方が多いので、一般的には症状が出るまでは手術は行いません。ただし子供の場合、殆どの場合発作を起こすので、手術を行います。また、胆嚢が石灰化を呈している場合、胆嚢ガンの発生率が50%と上がる為、手術を行います。以前は胆嚢摘出術は開腹手術で行われていましたが、現在は腹腔鏡(約1cm大の傷を数箇所)で殆どの場合摘出が可能です。この場合、手術自体も約1時間と短時間で済み、痛みも少ないので、回復期間もとても短くなっています。アメリカでは場合によっては日帰り、又は次の日に退院が可能です。1週間後には仕事も復帰可能です。
また、手術以外での治療法として、胆石溶解剤の服用、胆石破砕法などは日本では行われているところもありますが、再発率が非常に高いことや、またごく一部の場合しか効果がないなどの理由から、米国ではまず行われておりません。
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