グレープフルーツジュースと薬を一緒に併用してはいけない、とよく耳にしますが、今月はこのことについてお話します。薬局で処方薬を買い求めた事がある方は、薬の入れ物にいろいろな注意事項が張られているのを見た事があると思います。その中でグレープフルーツジュースは飲まないようにと言う記述に気付かれた方もおられると思いますが、いったい何がいけないのでしょうか?
事の始まりは約10年以上前、ある血圧降下剤とグレープフルーツジュースとの併用が薬の効果を促進させると言うデータが出たことから始まりました。その後他の薬も色々研究され、現在は数々の処方薬が反応すると言う結果が出ています。よく当院で聞かれる質問をまとめて見ました。
●Q
処方薬とグレープフルーツジュースを併用するのは危険ですか?
A よく話題にはなりますが、実際は処方薬の殆どが問題ありません。ほんの一部の薬が反応する可能性があるだけです。もしもこの一部の薬を飲んでる方で、グレープフルーツジュースが好きな方は薬を換えたほうが無難でしょう。
●Q どの薬が反応するのですか?
A 主に4種の薬が該当します。高脂血症治療剤、血圧降下剤、抗ヒスタミン剤(アレルギーの薬に多い)、向精神薬。ただし、このすべての薬が反応すると言う事はありません。たとえば血圧降下剤は現在50種類以上ありますが、その中で5〜6種類が該当します。
●Q 市販薬は?
A 現在の時点では市販薬(風邪薬、頭痛薬等)でグレープフルーツジュースと反応する物はありません。
●Q 静脈注射、筋肉注射、皮下注射などでの薬は?
A 問題ありません。主に腸の中で反応するので、経口薬以外は心配いりません。
●Q なぜ反応を起こすのですか?
A グレープフルーツジュースは腸内に存在する酵素(消化する役割をもつ成分)の一部(CYP3A)の働きを抑制する効果を持っています。本来であれば薬の幾らかはこの酵素によって腸内で分解され、無効になります。分解されない部分だけが腸内から吸収され、血液内に移動し薬の効果を現します。この酵素の働きが抑制される為、本来分解される薬が元のままで残り、吸収率が上がり、体内の薬の量が増えてしまいます(薬の飲みすぎと同じ状態となってしまいます)。
●Q どのくらいの量で反応を起こすのでしょうか?
A 個人差がありますので、一概には答えられません。当然、グレープフルーツが多ければ多いほど、危険ですが、普通の8ozグラス一杯でも、影響が出る場合もあります。
●Q どのくらいの時間を空ければいいのでしょうか?
A これもはっきりした答えはありません。あるデータによると、2〜3日グレープフルーツジュースの影響は残ると言う報告もあります。
●Q ジュースではなく、グレープフルーツ自体を食べた場合は?
A これに関してはデータはまだ少なく、最近Felodopine(血圧降下剤の1つ)とグレープフルーツ自体の反応を調べた結果が出ました。この結果、ジュースを飲むのと同じ反応がありました。他の薬ではまだデータはありませんが、同じような影響があると予想してもよいと思われます。
●Q 知らずに今までグレープフルーツジュースと、使うべきでない薬を併用してきましたが、今後も大丈夫でしょうか?
A 当然、どのような反応があるか、また反応の程度等は個人差がありますので一口には言い切れません。ただし今まで大丈夫でも、今後その時の体調によって反応が出るということもありえますので、別の薬に換えたほうがよいでしょう。
●Q 死亡例はありますか?
A 現在の時点ではありません。
残念ながら、更に詳しいデータは今の時点ではありません。これはおそらく死に至ると言う危険性が少ない為、それほど研究に力を入れてないからだと思われます。
まとめますと、処方薬の一部(血圧降下剤、高脂血症治療剤、抗ヒスタミン剤、向精神薬)はグレープフルーツジュースと一緒に併用すると反応してしまう事があります。反応すると言う事は、腸内での代謝が抑制され、薬が多く吸収されます。つまり、薬を飲みすぎたのと同じ状態になります。
また当院でよく処方している薬で反応する可能性があるのは 下記のものです
可能性が高い薬 Buspar Mevacor Zocor
可能性が中程度の薬 Viagra Medrol Claritin Valium Lipitor
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